1.南八甲田火山群
南八甲田火山群は、東西約20km、南北約10kmの範囲に分布する9の成層火山体で構成されています。西から、南沢岳(標高1,199m)、下岳(1,342m)、横岳(1,340m)、逆川岳(1,183m)、櫛ケ峯(1,517m)、駒ケ峯(1,416m)、猿倉岳(1,353m)、乗鞍岳(1,450m)、赤倉岳(1,226m)が分布しており(写真1-1-1,1-1-2)、櫛ケ峯が南八甲田火山群の最高峰です。南北八甲田山系は、十和田市の市街地周辺からも一望できます(写真1-1-3)。成層火山とは、ほぼ同一の火口から複数回の噴火により、溶岩や火山砕屑(さいせつ)物などが積み重なり形成された円錐形の火山のことで、代表例は富士山や岩木山です。
2.八甲田カルデラ
八甲田カルデラ(直径約9km)は約100~40万年前に発生した少なくとも3回の大規模火砕流噴火により形成されたと考えられています。約99~78万年前の八甲田黄瀬火砕流、約76万年前の八甲田第1期火砕流、および約40万年前の八甲田第2期火砕流の3つです。最初は八甲田第1期・第2期火砕流の噴火イベントにより八甲田カルデラが形成されたと考えられていましたが、その後、八甲田第1期火砕流堆積物よりも古い八甲田カルデラ由来の火砕流堆積物が十和田市黄瀬川流域で見つかり、八甲田第0期火砕流堆積物と命名されました。「第0期」という名称は好ましくないこと、および発見地点が黄瀬川流域であることから、この堆積物は八甲田黄瀬火砕流堆積物と新たに命名されました。
八甲田カルデラは、水を湛えた湖として存在していたと考えられています。その後、後述する北八甲田火山群が、カルデラの南部から西部にかけて形成されるとともに、駒込川が侵入したため、湖は消滅しました。現在は、カルデラの北部から東部にかけて田代平(写真1-2-1)として存在しています。田代平の北方から東方にかけてカルデラ壁(外輪山)が認められます。駒込川(写真1-2-2)は、田代平から北西に向かって流れ、青森市街で堤川と合流しています。
3.北八甲田火山群
北八甲田火山群は後カルデラ期に形成された東西約14km、南北約12kmの範囲に分布する11の成層火山体で構成されています。北から南に連なる前嶽(標高1,252m)、田茂萢(たもやち)岳(1,324m)、赤倉岳(1,548m)、井戸岳(1,550m)、八甲田大岳(1,585m)、仙人岱(1,388m)、硫黄岳(1,360m)、石倉岳(1,202m)、ならびに仙人岱から東に連なる小岳(1,478m)、高田大岳(標高1,552m)、雛岳(1,240m)が分布しており(写真1-3-1、1-3-2、1-3-3)、八甲田大岳が北八甲田火山群の最高峰です。北八甲田は現在も火山活動が継続しており、気象庁により24時間体制で監視されています。後述する酸ヶ湯温泉の近くに、地獄沼(写真1-3-4)があり、沼には強酸性で90℃の熱湯が毎分2,700リットル湧き出ています。
4.十和田八幡平国立公園
八甲田山周辺は後述する十和田湖や奥入瀬渓谷とならんで十和田八幡平国立公園に指定されています(十和田八甲田地域)。八幡平地域では八幡平、玉川温泉、秋田駒ヶ岳、岩手山がこの国立公園に含まれます。十和田八甲田地域には酸ヶ湯温泉(写真1-4-1)、城ヶ倉温泉(写真1-4-2)、猿倉温泉、谷地温泉(写真1-4-3)、蔦温泉(写真1-4-4)、十和田湖畔温泉、奥入瀬渓流温泉など温泉地が多く、また、新緑や紅葉の名所としても知られています。
歌人・詩人・随筆家・評論家であった大町桂月は、十和田湖や奥入瀬渓流、蔦温泉をこよなく愛し、晩年には蔦温泉に居住しました。蔦温泉旅館で死去し、墓も同旅館近くにあります。
桂月は十和田湖や奥入瀬渓流を
住まば日本(ひのもと) 遊ばば十和田
歩きゃ奥入瀬 三里半
と歌っています。
また、蔦温泉旅館前の池のそばの歌碑(写真1-4-4)には
世の人の 命からめる 蔦の山
湯のわく処 水清きところ
と刻まれています。
参考文献
工藤 崇ら 「東北日本、北八甲田火山群の地質と火山発達史」 地質学雑誌 110:271-289, 2004
宝田晋治・村岡洋文 「八甲田山地域の地質」 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅) 産業技術総合研究所地質調査総合センター 平成16年
工藤 崇ら 「八甲田カルデラ南東地域に分布する鮮新世末期~中期更新世火砕流堆積物の層序と給源カルデラ」 地学雑誌 115:1-25, 2006