はじめに
疏水とは他の水源から水を引く目的で造られた水路のことです。上述した4つの発電所に送水するために造られたトンネルも疏水になりますが、ここでは灌漑用に利用される農業用水路について述べたいと思います。
奥入瀬川水系の疏水で最もよく知られているものは稲生川ですが、この用水路は不毛の荒野である三本木原(さんぼんぎはら)台地を開墾・開田するために造られたものですので、最初にこの台地について説明し、次いで稲生川、三本木幹線用水路、並びにそれらの支線用水路について述べます。続いて、奥入瀬川から取水する法量堰、十二里堰、赤石堰、奥瀬堰、新田堰、相坂平堰、赤沼堰、沢田下川原堰、南川原堰、大光寺堰、古渕堰、下田堰について説明し、最後に奥入瀬川の支川から取水する大畑野堰、太田川原堰、小増沢堰、切田後平堰、岩船堰、種原堰について述べたいと思います。なお、法量堰、十二里堰、赤石堰、沢田下川原堰、太田川原堰、切田後平堰、岩船堰は、本書で使った仮称です。
4.稲生川および三本木幹線用水路の支線用水路
稲生川および三本木幹線用水路からは多くの支線用水路が引かれています。ここでは十和田市に分布する6つの主要支線用水路(深持用水路、元村用水路、切田用水路、渋沢用水路、一本木沢用水路、沖山用水路)について紹介します。これらのうち切田用水路は元村用水路から分水後、稲生川より南側の三本木原台地を流れますが、それ以外の用水路は稲生川より北側の三本木原台地を流れます。
参考文献
十和田市教育委員会 「十和田市 史跡・文化財マップ」 2016
高野春男 「不毛の三本木原台地を美田美畑に変えた先人たちの偉業―人工河川「稲生川」の歴史―」 農業農村工学会誌 76:505-508, 2008
新渡戸記念館だより(第44号) 「稲生川が『疏水百選』に」 2006
嶋 栄吉ら 「稲生川用水に学ぶ三本木開拓の精神と技術」 農業農村工学会誌 77:800-801, 2009
宮川潤孝ら 「三本木幹線用水路急流工の落差を活用した小水力発電」 農業農村工学会誌 84:218-219, 2016
十和田市立新渡戸記念館ボランティアKyosokyodo(共創郷土) 「稲生川の魅力を歩く」 2013
相坂平土地改良区 「相坂平通水50周年記念:開田の苦闘史」 1975
丹治 肇 「奥入瀬川南岸下田堰(藤坂頭首工)―青森県十和田市・おいらせ町―」 農業農村工学会誌 83:149-150, 2015