はじめに
十和田市には大きく分けて二つの水系があります。一つは奥入瀬川水系、もう一つは砂土路川水系です(第1章八甲田山の成り立ち 「図1-1 十和田市の山・河川・道路図」を参照)。前者は十和田市のほぼ全域を流域とする大きな水系ですが、後者は三本木原台地の北側を流域とする比較的小さな水系です。三本木原台地については、第5章奥入瀬川水系の疏水「1.三本木原台地」を参照してください。
十和田市には大きく分けて二つの水系があります。一つは奥入瀬川水系、もう一つは砂土路川水系です(第1章八甲田山の成り立ち 「図1-1 十和田市の山・河川・道路図」を参照)。前者は十和田市のほぼ全域を流域とする大きな水系ですが、後者は三本木原台地の北側を流域とする比較的小さな水系です。三本木原台地については、第5章奥入瀬川水系の疏水「1.三本木原台地」を参照してください。
奥入瀬川水系の本川(本流)である奥入瀬川は、青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがる十和田湖を源流とし、太平洋に注ぐ全長約71kmの二級河川です(写真3-1-1、3-1-2)。二級河川とは都道府県が管理する河川であり、一級河川とは国が管理する河川のことです。奥入瀬川は十和田湖の唯一の流出河川で、湖の東岸の十和田市奥瀬子ノ口(ねのくち)から十和田市法量焼山まで北北東に流れ、そこから東に向きを変え、三本木原台地の南縁、六戸町、おいらせ町を流れ、八戸市とおいらせ町の境界で太平洋に注ぎます。
子ノ口から焼山までの約14kmは奥入瀬渓流(写真3-1-3)とよばれ、八甲田山・十和田湖とともに十和田八幡平国立公園に属し、国の特別名勝および天然記念物(天然保護区域)に指定されています。子ノ口から1.5km程下流に銚子大滝(高さ7m、幅20m、写真3-1-4)があります。
十和田湖に流入する主な河川には、宇樽部川(十和田市)や大川沢(小坂町)、神田川(十和田市と小坂町の境界付近、写真2-4-4)などがあります。
奥入瀬川には多くの支川(支流)がありますが、主なものを上流から順に列挙すると、ソスペ川、惣辺(そうべ)川、小幌内川、大幌内川、黄瀬(おうせ)川、蔦川、色内(いろない)川、淵沢川、北向(きたむき)川、中里川、片淵川、熊ノ沢川、生内(おもない)川、篠田地(しのだち)川、種井沢川、切田川、藤島川、後藤川、畑刈川、今熊川などです。これらのうち、ソスペ川から蔦川までが奥入瀬渓流に流入する支川です。
惣辺川は三ツ岳(標高1,159m)と十和田山(標高1,054m)の北側に源を発し、北に向かい流れ、石ケ戸の下流で奥入瀬渓流右岸に流入します(写真3-2-1)。ソスペ川、小幌内川、大幌内川、黄瀬川は南八甲田と十和田湖北側の外輪山との間に源を有し、東あるいは北東に向かって流れ、奥入瀬渓流左岸に流入します。蔦川は南八甲田と北八甲田との間あたりに源を発し、南東に向かって流れ、国道102号線十和田橋から800m程上流で奥入瀬渓流と合流します(写真3-2-2)。
奥入瀬渓流には上述した川以外に、寒沢(さむざわ)や石坂沢、養老沢など多くの沢が合流していますが、これらの沢は滝を形成して、奥入瀬渓谷に流入しています。例えば、養老沢は雲井の滝(写真3-2-3)、石坂沢は白布(しらぬの)の滝(写真3-2-4)を形成しています。
焼山より下流で、奥入瀬川左岸に流入する支川には淵沢川、中里川、熊ノ沢川、畑刈川、今熊川などがあります。
淵沢川は湯ノ台に源を発し、南東方向に流れ、法量渕瀬で奥入瀬川に流入(写真3-3-1-1、3-3-1-2)する全長約5kmの小河川です。
中里川は黒森(標高1,023m)の南側あるいは北八甲田の東側に源を発し、南東方向に流れ(写真3-3-2-1, 3-3-2-2)、法量下川原で奥入瀬川と合流します。一次支川中里川の上流には、二次支川冷水沢が合流し、冷水沢には更に三次支川湯尻沢(写真3-3-2-3)が合流しています。これら3つの支川の水は、第4章奥入瀬川水系の水力発電所で述べる「蔦発電所」で利用されています。奥入瀬川との合流地点から少し上流で、第5章奥入瀬川水系の疏水で述べる「稲生川」と「三本木幹線用水路」が、中里川の下をサイフォンで横断しています。
上流域では、第1章八甲田山の成り立ちで述べた八甲田カルデラ活動期の約40万年前に形成された八甲田第2期火砕流堆積物を長期間にわたって浸食し、深い谷を形成しています。
熊ノ沢川は石倉山(標高891m)と黒森の間に源を発し、南東方向に流れ(写真3-3-3-1, 3-3-3-2)、法量川口下で奥入瀬川と合流します(写真3-3-3-3)。一次支川熊ノ沢川には、二次支川小増沢が深持若狭で合流しています(写真3-3-3-4)。
熊ノ沢川上流域では、先に述べた中里川と同様に、八甲田カルデラ活動期の約40万年前に形成された八甲田第2期火砕流堆積物を長期間にわたって浸食し、深い谷を形成しています。
後述する人工河川稲生川は、三本木原台地の最も標高の高いところを東に向かって流れていますが、畑刈川と次に述べる今熊川は、稲生川の南側の三本木原台地に源を発する小河川です。
畑刈川は十和田食肉衛生検査所あたりに源を発し、三本木野崎(写真3-3-4-1)、六戸町折茂畑刈(写真3-3-4-2)を東方に流れ、県道212号線共栄橋から150m程上流で奥入瀬川と合流する(写真3-3-4-3)、全長約4kmの河川です。三本木稲吉を流れる3本の農業用排水路が合流し(写真3-3-4-4)、畑刈川の最上流部に流入しており、畑刈川は主に農業用排水路として機能しています。
今熊川は十和田市東十三番町(写真3-3-5-1)、相坂(おうさか)高清水(たかしず)(写真3-3-5-2)、並びに六戸町折茂今熊(写真3-3-5-3)に源を発し、共栄橋から1km程下流で奥入瀬川と合流します(写真3-3-5-4)。
焼山より下流で、奥入瀬川右岸に流入する支川には、色内(いろない)川、北向(きたむき)川、片淵川、生内(おもない)川、篠田地(しのだち)川、種井沢川、切田(きりだ)川、藤島川、後藤川などがあります。
色内川(いろないがわ)は、立惣辺山(標高569m)の北東側に源を有し、北に向かって流れ、桂月橋から1.3km程下流で奥入瀬川に流入する小河川です。奥瀬栃久保の色内橋(写真3-4-1-1、3-4-1-2)より下流100m程のところに、大畑野堰頭首工(第5章奥入瀬川水系の疏水「17.大畑野堰」を参照)が設置されています。
北向川(きたむきがわ)は、「第4章奥入瀬川水系の水力発電所」で述べる立石発電所の南西約1.5kmに位置する谷を源とし、奥入瀬川右岸に沿って東方に流れ(写真3-4-2-1、3-4-2-2)、市道両泉寺伝法寺線奥入瀬西大橋から100m程上流で奥入瀬川と合流する全長約6kmの小河川です。奥瀬北向で、「第5章奥入瀬川水系の疏水」で述べる奥瀬堰が北向川の上を水路橋で立体交差しています。
片淵川は、馬ノ神(標高693m)の北側に源を発し、奥瀬仙ノ沢(写真3-4-3-1)・中通(なかどおり、写真3-4-3-2)・小沢口を通って北東方向に流れ、市道大堀段ノ台線大堀橋のたもとで奥入瀬川と合流します。奥瀬中通で、奥瀬堰が片淵川の上を水路橋で立体交差しています(第5章奥入瀬川水系の疏水「8.奥瀬堰」を参照)。
生内川(おもないがわ)は、大母屋(おおもや、標高526m)および小母屋(おもや、標高528m)付近に源を発し、北東方向に流れています。中流から下流は奥瀬と沢田の境界域を流れ、国道102号線広瀬橋から1km程上流で、奥入瀬川と合流します。合流地点から200m程上流の生内川に太田川原堰の頭首工が設置されています(第5章奥入瀬川水系の疏水「18.太田川原堰」を参照)。
市道両泉寺伝法寺線の奥瀬生内と沢田栃ノ台の境界部分には、十和田市で2番目に長い生内大橋(橋長215m、写真3-4-4-1)が架かっており(最も長い橋は後述する後藤川大橋です)、橋から見下ろす景色は絶景です(写真3-4-4-2、3-4-4-3)。
奥瀬生内で、奥瀬堰が生内川に流入しています(写真3-4-4-4、第5章奥入瀬川水系の疏水「8.奥瀬堰」を参照)。
篠田地川(しのだちがわ)は、沢田蒼前平(そうぜんたい)の北端あたりを源(写真3-4-5-1)とする農業用排水路です(写真3-4-5-2)。沢田篠田地と蒼前平との境界(写真3-4-5-3)ならびに三日市との境界(写真3-4-5-4)を流れ、県道166号線大正橋から300m程下流で奥入瀬川に流入する(第5章奥入瀬川水系の疏水「13.南川原堰」写真5-13-1を参照)、長さ1.2km程の短い川です。
種井沢川は、沢田種井沢にある大沼(写真3-4-6-1)を源流とし、沢田を北東方向に流れ、沢田下谷地(写真3-4-6-2)で奥入瀬川に流入する小河川です。種井沢川は、沢田の音道(写真3-4-6-3)と番屋(写真3-4-6-4)の2カ所で後述する奥瀬堰(第5章奥入瀬川水系の疏水「8.奥瀬堰」を参照)と合流しています。
切田川(きりだがわ)(写真3-4-7-1)は、月日山(つきひやま、標高550m)の北側に源を発し、切田を北東方向に流れ、切田家ノ下で奥入瀬川に流入します。切田川の二次支川である三ツ又川(写真3-4-7-2)は、月日山の北東側に源を発し、切田あるいは大不動(おおふどう)を北東方向に流れ、県道45号線横道橋のたもとで切田川と合流します(写真3-4-7-3)。切田川には、切田西大沼平に切田後平堰の頭首工が、切田岩船に岩船堰の頭首工がそれぞれ設置されています(第5章奥入瀬川水系の疏水「20.切田後平堰」・「21.岩船堰」を参照)。
藤島川およびその二次支川である小林川は、月日山の南東側に源を発し、藤島川は大不動(おおふどう)と米田(まいた)の境界線あたりを(写真3-4-8-1)、小林川は米田(写真3-4-8-2)をそれぞれ北東方向に流れ、両川は米田午房平(ごぼうたい)で合流します。藤島川は更に米田を北東方向に流れ(写真3-4-8-3)、国道4号線相坂大橋から300m程上流で奥入瀬川に流入します(写真3-4-8-4)。
奥入瀬渓谷の東側および三ツ岳の北側の標高550m~650mの比較的平坦な地域(奥瀬惣辺)に、東西約1km、南北約4kmに亘る十和田市営惣辺放牧場(総面積333ha)が設けられており、毎年5月下旬~10月下旬にかけて肉用牛が放牧されます(写真3-4-9-1)。上述した奥入瀬渓流に流入する惣辺川や養老沢は惣辺放牧場の西側を北に向かって流れています。
牧場からは、大駒ケ岳、三ツ岳、十和田山が南方に(3-4-9-2)、御鼻部山が西方に(3-4-9-3)、八甲田、黒森、八幡岳が北方に一望できます(3-4-9-4)。
後藤川は、惣辺放牧場の南端より1km程東側に源を発し、滝沢平(たいら)あたりまで東方に流れ、その後北東に向きを変え、十和田市と六戸町との境界付近で奥入瀬川と合流します。
後藤川上流域の滝沢上指久保(かみさしくぼ)には、南北約400m、東西約3kmに亘る大平放牧場(総面積107ha)が設営されており、惣部放牧場と同様に夏季と秋季に肉用牛が放牧されます。
後藤川上流の十和田市滝沢と新郷村戸来(しんごうむらへらい)の境界域には指久保ダム(写真3-4-10-1、3-4-10-2)があり、灌漑用水源として利用されています。指久保ダムには十和田市で最も長い後藤川大橋(写真3-4-10-3、県道45号線、橋長230m、湖面からの高さ51m)が架かっており、十和田市の観光スポットになっています。滝沢に整備された指久保ダム小水力発電所(最大出力194キロワット)が2023年7月6日から稼働を始めています。
米田渡場(わたりば)の県道168号線種原橋から200m程下流の後藤川に種原堰頭首工が設置されています(写真3-4-10-4、第5章奥入瀬川水系の疏水「22.種原堰」を参照)。
砂土路(さどろ)川水系は、本川の砂土路川と支川の豊良(とよら)川、後野(うしろの)川、樋口川、八斗沢(はっとざわ)川で構成されています。砂土路川、後野川、樋口川、並びに八斗沢川は人工河川稲生川の北側の三本木原台地に源があります。
砂土路川は、本来、高瀬川水系の支川ですが、本書では便宜的に砂土路川水系としました(「まえがき」を参照)。
砂土路川は、深持(ふかもち)小橋あたりに源を発し、深持(写真3-5-1-1)・洞内(ほらない)を概ね北に向かって流れます。国道4号線(かつての奥州街道)洞内橋のたもとで豊良川と合流後(写真3-5-1-2)、北東に向きを変え、洞内と馬洗場(うまあらいば)・大沢田の境界、立崎と大沢田の境界(写真3-5-1-3)、並びに大沢田を流れ、東北町大浦を横切り小川原湖に注ぎます。
深持糠森の砂土路川左岸には、約1万5千年前の十和田八戸火砕流により埋没したアカエゾマツなどの埋れ木(うもれぎ)が生木の状態で残っており、「小田の万年木(こだのまんねんぼく)」(写真3-5-1-4)と呼ばれています。
豊良川は七戸町の唐松にある沼を源流とし、深持(写真3-5-2-1)および洞内(写真3-5-2-2)を流れ、上述した洞内橋のたもとで砂土路川と合流します(写真3-5-2-3)。
後野川は、深持三間木沢(みまぎざわ)と三本木千歳森(せんざいもり)あたりに源を有し、三本木間遠地(まとち)・洞内後野(写真3-5-3-1)を北に向かって流れ、砂土路川と豊良川の合流地点より600m程上流で砂土路川と合流する(写真3-5-3-2)小河川です。
樋口川は、洞内樋口にある「みちのく国際ゴルフ俱楽部」あたりに源を発し(写真3-5-4-1)、北に向かって流れ、大沢田一号橋のたもとで砂土路川と合流する(写真3-5-4-2)小河川です。
八斗沢川は、相坂高清水並びに八斗沢家ノ下(写真3-5-5-1)あたりに源を発し、北に向かって流れ(写真3-5-5-2)、県道22号線早坂橋から500m程上流で砂土路川と合流する(写真3-5-5-3)小河川です。
十和田市教育委員会 「十和田市 史跡・文化財マップ」 2016